伊勢新聞

2019年10月1日(火)

▼検察審査制度の普及啓発を目的街頭啓発している検察審査員経験者らで作る県検察審査協会連合会は、15年ほど前から加入者が減り、かつての5支部が2支部になったという

▼国民への十分な司法のサービス提供や理解を得られていなかったとして司法制度改革が始まり、裁判員制度成立が15年前。積年の国民無視が加入者離れを促進したのかもしれない

▼のぼりに「ふにおちぬ不起訴処分に開く窓」。「市民が親しみを持ち交流を図れる活動を取り入れていきたい」と言うが、タイミングが悪すぎないか。検察審査会の起訴相当議決で強制起訴となった東電の幹部3人が無罪判決を受けたばかり

▼強制起訴は、国民の常識を取り入れ、身近な存在にする司法参加の一環。裁判員制度とともに制度化されたが、裁判員制度以上に、裁判の中でその趣旨は生かされていない。裁判員裁判の判決が高裁で破棄された時、裁判員制度とともに司法の在り方も問われたが、強制起訴が棄却されても、制度の方が問われるだけで、検察の起訴の在り方も、裁判所の判断も、ほとんど変わりない

▼助言役の弁護士、審査補助員がヤメ検が多いことも、検察の手のひらで踊っている印象がある。制度以前だが、鈴鹿市長の情実採用疑惑を市民が津地検に告発したことがある。半月ほど関係者を取り調べたきり棚上げされ、不起訴の連絡が告発者に届いたのは数年後。時効直前だった

▼「窓」にも近づけなかった現実がある。起訴独占権を1ミリも侵させないという検察の意思は変わるまい。審査員経験者も無力感だけ残ったのかも知れない。