伊勢新聞

2019年9月29日(日)

▼市の助役に請われた県OBに、先輩の副知事がはなむけに「ゴルフはするな」の言葉を贈った。好きなゴルフをやめろとは大きなお世話だが、言われたOBは「考えてみたら、自分で金を払ったことは一度もないもな」。中部電力の芦浜原発計画を巡り、県担当幹部も務めた▼県の担当部局と中電の立地担当者との蜜月関係も長いが、ゴルフや酒席がその中心だったのもいうまでもない。立地担当責任者の札びらの切り方には定評があったが、公務員側は地元町長が逮捕されたりしたこともありもっぱら接待を受ける側。関西電力の幹部らが原発絡みで地元町の元助役から多額の金や物品およそ3億2000万円相当を受け取っていたというのは驚きだ▼税務調査によると、元助役は原発関連の工事請け負い会社から受注に絡む手数料を取り、その一部を関電幹部に渡していたというから、金を生み出す仕組みそのものは珍しくない。仕切っているのが電力側か行政側かの違いということだろう。計画段階か稼働後かの違いでもあるのかもしれない▼元助役は原発行政に強い力を持ち「天皇」と呼ばれたという。象徴天皇の平成を経て、この呼称も久々に聞いた。四半世紀の記者生活で、この言葉を聞いたのは2度。1度目は、大分県知事を務めた平松守彦氏。旧通産省電子政策課長当時、業界の基本的な仕組みを整備しコンピューター業界の天皇と呼ばれた▼もう一人は、防災センター汚職で逮捕された元県幹部。公共事業の建築関係を新しく営繕の所管にし采配・君臨。そう呼ばれた。役人の手口として似ているところがある。