伊勢新聞

2019年9月21日(土)

▼県教委の廣田恵子教育長がこれまで非公表の体罰が過去5年間で16件あったことを明らかにするとともに、公表基準を見直す考えを示した。腕立て伏せ強要の体罰を公表せず、知事から「感度が足りていない」と一喝されて飛び上がったか。どんなに世間が騒ごうが知らん顔で、強い者に言われるとたちまち態度を変える。権力者になびくこと、風見鶏のごとしか

▼これまで非公表だったのは、廣田教育長に言わせれば「懲戒処分には当たらない程度だったため」。法が定める懲戒は、免職、降任、停職、減給、戒告の五つだ。記録され処遇に影響する。その下に不問にするのも問題という処分があり、訓告、厳重注意、口頭注意の三つ。こちらは記録に残らない

▼「懲戒処分には当たらない程度」というのは後者の三つを指すが、戒告と訓戒の境界は極めてあいまい。鉛筆のなめ加減で分かれるとされる。記録に残り、叙勲の欠格事由にもなるとされる戒告を避け、訓戒になる傾向が強い

▼県教委の五年間の体罰事例で、懲戒は児童を後ろから押してけがをさせた減給の一件だけ。戒告はない。非公表の16件のうち文書訓告が12件というのがそのあたりの事情を物語る。腕立て伏せ強要も訓告で、ほかに生徒に足を掛けて倒した例などある

▼相次ぐ不祥事で県教委が処分厳罰化を発表したのは5月。傷害、飲酒運転、窃盗、わいせつ行為などは引き上げたが、学校現場の問題として最も肝心の体罰には手が回らなかったか

▼教育機関としてあり方が問われるが、訓告止まりにして知らん顔を決め込んだのかも知れない。