伊勢新聞

2019年9月13日(金)

▼「甚大な被害がもたらされた」とした上で「機能回復のみを目的とした通常の災害復旧事業だけでなく、再度の被災を未然に防ぐための改良事業に取り組む」というのは平成23年12月定例記者会見で、その3カ月前に発生した紀伊半島大水害に対処する鈴木英敬知事の言葉。就任して8カ月目。強い意気込みを感じる

▼「非常に大きな被害が出ている」とした上で「1日も早く(県民の)生活が通常に戻るよう復旧させたい」というのは先の記録的大雨に対する知事の言葉。こちらはぶらさがり会見で、万事お手軽なのは仕方ないとして、意気込みまでが軽くなったようなのは気のせいか

▼東日本大震災を受けて、知事の1期目は災害対策に傾注。復興が復旧とセットで語られ、紀伊半島大水害でも、冒頭の会見の1月前の会見では「復旧・復興を一丸となってやっている最中」などと発言していたが、その後に組織されて最前線で対策に当たる熊野建設事務所の専任部所名は「災害復旧室」。復興の名称は入らなかった

▼なぜか。平成16年の台風16号豪雨で紀北に設置した組織がその名称で「どう復旧から復興のフェーズに変えていくか要検討事項」(鈴木知事)。一気に歯切れが悪くなったのは、復興とはどういう段階、局面を指すか。いざ自分が責任者としてその言葉を掲げる立場になってはたと困ったのではないか

▼「防災危機管理部で検討中」とした結果は、どうなったか。今回の大雨災害で知事が「復旧させたい」と、さらりと流したのは、むろん「復興」という言葉を忘れてしまったからではあるまい。