伊勢新聞

2019年9月12日(木)

▼アコヤガイ大量死問題で、鈴木英敬知事は地元志摩市の立神真珠養殖漁業協同組合事務所での「すごいやんかトーク」で「漁業条件や飼育環境に影響があるかどうかを今週末までに解明する。感染症や遺伝子については10月末までに国や三重大と協力して原因を究明したい」

▼何とも小気味のいい発言だ。アコヤガイの大量死はこれまで何度も繰り返されたが、これほど短期間に期限を切って原因究明に期待を持たせた知事はいない。何しろ過去の大量死で、全容が解明されたと言えるケースがあるかどうかもはっきりしない。考えられる原因のあれこれを改善するうちにへい死率が減少し、主因に位置づけられたというのも現実に近い

▼英虞湾は典型的な閉鎖水域で、慢性的過密養殖も指摘される中で、湾外の海流の変化などに湾内の環境が大きく影響される。汚泥除去など環境悪化を除去する計画も、完全に遂行してはいない。冷水塊が湾口に居座り、湾内外の環流が遮られて酸素不足を起こしたという大量死もあった

▼国や三重大と協力すれば分からぬ原因などあるものかというのが知事の自信の背景ではあるまい。「漁業条件や飼育環境に影響があるか」「感染症や遺伝子」の4つに調査項目を絞り込んでそれぞれ解明したいと言っているに過ぎない。大量死の原因がその4項目と関係があるかどうかは、また別の問題だろう

▼野生動物か人間の活動かにほぼ限定される豚コレラの感染経路も特定は困難だが、自然を相手にした原因究明はその比であるまい。何としても封じ込めるという知事の意気込みは伝わってくる。