伊勢新聞

2019年9月7日(土)

▼局地的集中豪雨は台風と違って予測不可能とは散々聞かされていたが、県北部を襲った記録的大雨はそのことをまざまざと見せつけた。「不意を突かれた」と県災害対策本部が言うように4日の夕方に四日市方面に大雨注意報が発令されるまでは、いや発令されてからさえ、誰も災害への警戒心など持たなかった

▼注意報、警報はまたたく間にいなべ市、東員町へと拡散。土砂災害情報が出て、同日夜は雷、稲光のごう音とともに激しい雨に見舞われ、東員町に県内初の警戒レベル5の災害発生情報が出された。道路が川の状態となり、いなべ市大安町で三岐鉄道高架下(アンダーパス)に入った中型トラックが水没。運転手が死亡した

▼災害発生情報発令の時はすでに避難には手遅れで、警戒レベル3、4で避難開始し、5では命を守る最善の行動を取るよう国は呼びかける。しかし、3、4がなくていきなり5日午前1時に5になった。山側を離れ、2階へ移動するしかない

▼引き続き菰野町に災害発生情報が発令されたが、国の指針に基づき昨年から県が整備に力を入れている保健医療活動員「災害時小児周産期リエゾン」は東員町へ一人派遣しただけだった。昨年3人養成、本年度はさらに充足をうたっていたが、効果を発揮するまでは至らなかったようだ

▼東員町で三孤子川が堤防を越水、菰野町では田口川が氾濫した。河川整備の見直しも改めて求められよう。伊勢湾台風から60目の今年、防災の日は「スーパー伊勢湾台風」を想定して訓練した。警戒するのは台風ばかりでないことを、改めて思い知らされた。