伊勢新聞

2019年9月5日(木)

▼東京五輪・パラリンピック組織委のガイドラインには「公共的な文書は全て、点字、テキストデータ、拡大文字または音声形式で提供することが望ましい」と書いてある。が、チケット購入方法についての点字説明資料や音声案内CDは作成せず、問い合わせに「後で修正できなくなるため作成すべきでないと判断した」

▼障害者差別解消法ができて、障害者の社会参加を妨げる要因を取り除く「合理的な配慮」が行政機関に義務付けられた。ガイドラインはその建前で、実際は守れない理由に従っているということだろう。どこにもある光景。障害者差別解消の条例まで制定した県でも日常茶飯事だ

▼障害者職員の募集で「介助者なしに勤務」を条件としていて障害者団体から抗議を受けたのは県教委だが、例えば県の相談支援従事者初任者研修でも、今年の実施要綱には資料の点字仕様や要点筆記、車いすなど、県として配慮しておくべきことを尋ねる欄があった

▼条例効果か。視覚障害者の受講希望者が「点字仕様」と書き込んだが、返事もないまま膨大な資料がデータで送られてきた。問い合わせても「そのデータで」「音声変換は自分で」の一点張り。課題の提出方法を聞いても1週間音沙汰なし。再度問い合わせて、点字でなく文章で、と答えた

▼建前と本音、二重基準、二枚舌―ということだろう。津市職員の身体障害者用募集は拡大鏡やつえなど配慮事項の希望を記入させてからこう続ける。「点字や音声パソコンを用いた試験は行っておりません。拡大鏡、つえを使用する場合は各自で用意してください」。