伊勢新聞

<まる見えリポート>三重の野球レベルアップへ 県内団体の交流活発化

【知事杯争奪第1回県社会人・大学野球選手権で一緒に運営に当たる社会人と学生ら=17日、鈴鹿市のホンダアクティブランドで】

春先から三重県内アマチュア野球団体の交流が活発化している。3月に社会人野球のJABA県野球連盟と、東海地区大学野球連盟三重学生野球リーグが共同で県社会人・大学交流戦を初開催。8月にはトーナメント形式の知事杯争奪第1回県社会人・大学野球選手権大会を開き、昨年秋の社会人日本選手権ベスト8のホンダ鈴鹿が初代王者に輝いた。両団体は今後も同大会の開催を予定。大会を通じて互いのレベルアップを図るとともに、協力して野球の普及育成活動にも取り組んで行く考えだ。

知事杯の決勝は都市対抗野球本大会出場経験のある社会人チーム同士の対戦になり、ホンダ鈴鹿が永和商事ウイングを6―1で退けた。学生チームの皇學館大はホンダ鈴鹿に7―0、四日市大は永和商事に9―0の七回コールドで敗れて社会人野球の厚い壁にはね返された。

プロ注目のホンダ鈴鹿の平尾奎太投手に散発5安打に抑えられた皇學館大で中軸を打つ4年生の奥谷行宏選手は「(学生野球レベルと)球の伸びが違う」と脱帽。それでも四回には二塁への当たりで一塁へ滑り込んで内野安打を記録し一矢報いた。卒業後も社会人チームで野球を続ける予定で「持ち味は出せた。自信になった」と手応えをのぞかせる。

カテゴリーを越えた交流は社会人チーム側にもメリットはある。決勝戦を除き若手を多く起用したホンダ鈴鹿の丸井健太郎監督は「実戦の中で若手の仕上がりを見る良い機会になった」と話した。

皇學館大戦では昨年春夏甲子園連覇の大阪桐蔭高校を今春卒業した石川瑞貴選手が公式戦デビュー。1番、二塁手でスタメン入りし3打数2安打1打点の結果を残し、指揮官も「思い切りプレーが出来ていた」と及第点を与えた。夏のオープン戦以降出場機会を増やしている19歳は「もっと状況に応じた攻撃ができるようになりたい」と意気込んでいた。

審判、アナウンス、記録などの裏方業務も両団体で協力して行った。皇學館大3年で野球部マネジャーの稲葉真子さんはJABA高山大会などに派遣実績のある女性アナウンサーのアナウンスをスマートフォンに録音し「マネジャー間で共有したい」と語った。社会人野球連盟県野球連盟の北畑達也専務理事は「アマチュア野球に携わる人間が連携を強化し、互いのレベルアップと底辺拡大につなげたい」と話した。

全国では地域で活動する軟式から硬式までのアマチュア団体が組織の垣根を超え、野球環境の整備や普及・育成に向けて連携する野球協議会の設立が相次いでいる。三重でも同様の新組織設立を目指す動きがあり、、JABA県野球連盟と東海地区大学野球連盟三重学生野球リーグの交流の活発化もこうした流れを受けたものだ。

交流を深める理由の1つに、少子化による野球人口の減少がある。野球離れを食い止める目的でJABA県野球連盟では所属チームごとに野球初心者向けのティーボール教室など開いているが、北畑専務理事は「南北に長い三重では単一組織ではカバーしきれない」と見る。「三重でもこうした新しい野球組織を作り、統一した考え方で普及活動に取り組むことができれば。まずは大学野球と社会人野球の横のつながりを強め、連携の輪を広げていきたい」と話している。