このコラムが掲載される頃、私は今月末に横浜で開催される「アフリカ開発会議」の関連イベントに参加するため、同僚でありまた上司でもあるコンゴ民主共和国の環境省次官と共にアフリカから日本に向かう飛行機の中にいるかも知れません。
「アフリカ開発会議」は英語の頭文字をとってTICAD(ティカッド)と呼ばれています。1993年に第1回目が開催されて以降、今回で7回目。日本が国連機関などと共にアフリカから約50名の大統領や首相などを招いて開催する日本版「アフリカ・サミット」です。前回のTICADは2016年、ケニアの首都ナイロビで開催されました。日本とアフリカで三年ごとに交互に開催されるため、今年は日本で開催されます。
ところで、なぜ日本はわざわざアフリカの代表団を日本に招いて国際会議を開催するのでしょうか。以前は国連でのアフリカ票の獲得、最近は「一帯一路」を打ち出し、強力にアフリカ支援を進めている中国への対抗に結びつける向きも多く見受けられます。確かに、外交の観点では、そういった側面もあるのでしょう。
しかし、アフリカで国際協力に従事する専門家にとってのTICADは、もう少し単純です。距離的にも心理的にも遠く情報も慢性的に不足する日本において、「アフリカ」のこと、私たちが日々取り組んでいる課題のことを少しでも知ってもらうための機会、それがTICADです。
今回、国際協力機構(JICA)ではTICAD開催にあわせて、「森から世界を変える」をキャッチフレーズに公開討論会を開催します。その関係で、JICAから私の同僚であるコンゴ環境省次官に「地球の片肺」と呼ばれるコンゴ盆地が抱えるさまざまな問題について話題提供してほしいといった話が持ち込まれた時、私は喜んでその話を次官につなぎました。
聞けば、次官は今回が初来日とのこと。彼に事情を説明すると、「オオナカ、私は観光で東京に行くつもりはない!」といつもの彼らしく、やる気満々です。何もかもが日本と正反対のコンゴの状況を、どうすれば日本の方々にしっかりと理解いただけるのか…彼と共に発表のための準備作業を進めました。
ボーダレス社会が進む一方、国家だけではなく、組織や個人レベルにおいても内向き志向になりつつあることが懸念される今日この頃…3年に1度、日本がアフリカの開発をテーマに国際会議を主催する意義は、国家外交の推進といった一言では決して代替できない多様なものだと考えます。
3年に1度訪れるTICADという貴重な機会を通じて、貧困、紛争、感染症、気候変動から自由貿易の推進まで今一度、「地球人」として直面しているさまざまな課題について理解を深めていただきたい、そう思います。
【略歴】大仲幸作(おおなか・こうさく) 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。