▼同じ立場になると、考えることも似てくるものに違いない。長期政権を目指した桂太郎が、不人気返上に記者団に専用の執務室を提供した。好意的記事を期待し、国民の人気を得ようとしたのである
▼安倍晋三首相はこのところ芸能界への接近が目立つ。マリオに扮して喝采を浴びたのに味をしめたか、先に吉本新喜劇に飛び入り出演してみせた。闇営業問題は想定外だったろうが、今度は新作映画「記憶にございません!」を鑑賞し主演俳優や監督と会食・懇談した
▼嫌われ者の首相が記憶を失い、秘書官らに支えられて執務を続けるストーリー。「ムッとしなかったか」と三谷幸喜監督から聞かれ「一瞬しましたけど」と笑って応じ、感想については「記憶にございません」と答えて笑わせた
▼「真摯に耳を傾けてくれる方」と監督。本心かどうか。次回はそんな余裕を粉砕する作品をとは言わせなかった。効果ありということだろう。朝日新聞記者を辞め立憲民主党から参院選に出馬した山岸一生氏が公式ブログに「政府与党、政権幹部からずいぶん、汚い言葉を投げつけられた」
▼愛想笑いで受け流し気に入られ、ネタを取る、そう頑張るほど政権にコントロールされ牙をもがれていくという。だから出馬かという気はするが、安倍政権の硬軟両様の巧みなメディア対策が垣間見える。タレントの松尾貴史氏が番組で安倍首相の物まねをして出演者らに大いに受けたそうだ
▼番組スタッフらにも同様だったが、物まねはこれっきりにと頼まれたという。安倍首相が聞いたら、一切関わっていないと言ったかもしれない。