伊勢新聞

2019年7月4日(木)

▼企業にコンピューターが入り出したのは昭和40年代(1965年~)初めで、ユートピアと合わせコンピュートピアと呼ばれた。各方面で活用が期待される昨今のAI(人工知能)の雰囲気に似ている

▼「あのころはおもしろかった」とコンピューター部門担当が語ったのは同50年代末。同部門の指示が〝神の声〟だった。「コンピューターの都合でこうする」と言えば、それまでの帳票の形式も一変した。事務作業の分析、見直しが進み、同部門担当者は全社の仕事に精通した

▼今はつまらないという。人間が働きやすいようにコンピューターを合わせるべきだという考えが台頭して〝神の声の伝達者〟から各部門の要求を実現する〝下請け屋さん〟に転落した。AIは、むろん後者の流れを出発点にしている

▼県も、児童虐待の一時保護などにAIを活用する実証実験を始めた。タブレット端末で架空の事例を入力すると、状況に応じた適切な判断をしてくれるという。「経験差に関係なく、リスクを的確に判断できる」と鈴木英敬知事。職員は、まず第一に「システムの習熟度を高めてもらいたい」

▼実践では、家庭訪問して児童のけがの場所や家族構成などを入力すると、AIが蓄積された県内の約6千件のデータを基に一時保護の割合を算出してくれる。家庭訪問しても保護者に追い返されたり、その場しのぎの言い訳を信じて帰ってきてしまい、惨事が起きている。データ入力が義務づけられ、嫌でも会わねばならなくなるとしたら、大きな前進だ

▼歴史は繰り返す。まずはAIに使われることから始めて―。