伊勢新聞

<まる見えリポート>岐路に立つ三重テラス 来館者大幅減で崖っぷち

【曲がり角を迎えた首都圏営業拠点の三重テラス=東京都中央区日本橋室町】

平成25年9月にオープンした県の首都圏営業拠点「三重テラス」(東京都中央区日本橋室町)が曲がり角を迎えている。30年度の来館者数が28年度のピーク時から激減。年度途中の25年度を除き過去2番目の低い来館者数となった。懸念されていた「大型イベント枯れ」の影響が直撃した格好だが、手をこまねいていては存在意義を失いかねない。そんな中、テラスのショップが「サービス オブ・ザ・イヤー2019」のセルフサービス部門1位を獲得するという朗報が飛び込んできた。テラス関係者も寝耳に水の覆面調査だったが、接客や商品陳列などが高評価を獲得した。とはいえ、祝賀ムードにひたる余裕はない。落ち込んだ来館者数を増やし、三重の情報発信拠点として飛躍に向け模索を続ける。

30年度の来館者数は57万5591人で、これは過去最高を記録した28年度の74万3074人から16万7483人減となった。28年度の最大の要因は伊勢志摩サミット効果だ。全国的に三重の知名度が上がり、テラス来館の誘因につながった。

だからこそ、その後目立った大型イベントがないため、数年前から来館者数が大幅に減る「冬の時代」の到来は予想されていた。29年度、30年度と続いた減少は、予想を裏切らない現実となった。

そんな状況を見通してか、県が昨年から提唱し始めたのが、単純な来館者数を追うのではなく、来館者のうちショップやレストランで実際にお金を払って県産品を購入したり飲食したりした人や、イベントスペースの入場者数、観光案内の利用者数など〝質〟を重視した「三重の魅力体験者数」としてカウントすること。

魅力体験者数は30年度実績から数値化しはじめ、その数約18万5千人。目標値は17万1000人でそれをクリアした、というのが県の自己評価だ。

この魅力体験者数なるものが、来館者数の減少から目をそらさすための詭弁であることは火を見るよりも明らかなのだが、先月19日の戦略企画雇用経済常任委員会で、担当課長が「量から質への転換を掲げている」と答弁。三重テラス導入決定時の常任委員長で長年見守り続けてきた服部富男県議を激怒させた。

ピークを迎えるまでは、売り上げなどより順調に伸びてきた来館者数を存在意義の盾にしてきたのは紛れもなく県。減少に転じてから「量より質」と強弁しても魂胆は見え透いている。

服部県議の鉄槌を受け、「量あってこその質の向上」(県営業本部)という意識に切り替えた。基本に立ち返り、来館者数の増加も追い求めていくことにしたという。

大幅な来館者数減、県議会からの叱咤という負の連鎖が続く中、三重テラスに一筋の光明が差した。

小売業、流通業などの業界専門誌「商業界」が実施する「サービス オブ・ザ・イヤー2019」で三重テラスが「セルフサービス部門」1位に輝いた。店舗のサービスレベルを評価する賞で、一般の認知度は少ないが、業界内では知る人ぞ知る、栄誉ある賞だという。

店員のあいさつやレジの対応、商品の説明や陳列の見栄えなどが評価対象で、三重テラスはトップレベルのお墨付きを得た。ちなみに総合1位は「生活の木 イオンレイクタウン」(埼玉県)。

三重テラスでは、三重県出身者ではない従業員への教育から、ショップ入り口に季節商品を展示してマンネリ化を防いだり、商品の説明をポップに分かりやすく示したりと、開業時からさまざまな問題点をあぶりだし、改善に努めてきた。受賞したのは都内のアンテナショップでは三重テラスだけで、その地道な努力が実を結んだといえる。

ただ、「まだまだ課題は山積」(県営業本部)で、受賞に浮かれることなくいっそう気を引き締める。西口勲首都圏営業拠点運営総括監は「受賞の知らせを受けるまで、全く知らなかった」としつつ、「おごることなく、これを励みにしながらよりいっそう努力したい」としている。