伊勢新聞

2019年6月14日(金)

▼県執行部の議員への配慮、そんたくはやめたということか。県議会一般質問で、鈴鹿市選出の下野幸助県議から児童虐待防止への決意を問われ、鈴木英敬知事は「私が就任した翌年、平成24年に四日市と桑名で虐待死事案があった」と切り出した

▼就任前年の22年、下野県議の地元鈴鹿市で児童虐待重篤事件が起き、県初の事例検証委員会が設置されている。地元の大事件が下野県議の虐待事案質問にどう関わっているかは知らないが、一言触れるのが執行部側の慣例であり、礼儀みたいなものだったが、知事は自分が見聞きした2事案に言及しただけ

▼児童相談所にAIを取り入れ、子どもの心に寄り添い、代弁するカナダ直輸入のアドボケイトを構築しているという答弁に下野県議が満足し、鈴鹿市への児相新設に謝辞を述べているのだから、はたからとやかくいう筋合いはないが、2人が危機意識を持つ札幌市の2歳女児衰弱死事件では母親と交際相手が逮捕された。桑名、四日市事例より鈴鹿市重篤事例に近い

▼関係機関の連携の悪さも指摘された。鈴鹿児相新設で、下野県議は県、市職員の一体化を評価したが、重篤事件では鈴鹿市転入前の他県から情報がなかったことが問題とされた。四日市市で一昨年、母親の交際相手から虐待を受け死亡したブラジル国籍の6歳女児事件では、直前の居住地鈴鹿から四日市へ情報がなかったとされる

▼教訓は継承されていたか。重篤事件も、現在虐待事例として検証している外国人女児死事件も、議会審議の話題に上らない。理想論を戦わせている気がしなくもない。