伊勢新聞

2019年6月11日(火)

▼国会議員が詐欺を働いたのではない、詐欺師が国会議員になったのだ―と言われたのはオレンジ共済組合事件である。参議院議員の政治団体が運営していた共済団体が高配当をうたって資金を集めながら私的に流用して倒産した詐欺事件で、北川正恭氏の知事選にも献金されていた

▼記者会見で献金の処理について二転三転し、改革知事として中央の報道記者の評価が高かった半面、地元記者らの不信感が募る相矛盾する現象を招いた。問題の参院議員は逮捕後も辞職せず、4年後の最高裁の上告棄却で有罪が確定し、失職した

▼北方領土を訪れて、元島民らに戦争を促すような発言をしたり、下品な言辞を弄した丸山穂高衆院議員が、衆院の糾弾決議の動きに「人民裁判的」「議員辞職勧告決議等の先例と比べ、相当の違法行為があったわけではない」などの弁明書を提出した。小泉進次郎議員らも「みんなで糾弾するということに自分の中では腑に落ちなかった」して採決を欠席した

▼かばう余地はないが「進退を促す」のはどうかというのである。議員の出処進退は「自分自身で判断するもの」という考え方があるのだろう。議員の身分が保障されていることから定着した解釈だが、政治家としての資質、品位より刑事事件の方が重いというのもおかしな話だ

▼森友学園問題で「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した安倍晋三首相はその後「贈収賄などではないという文脈で申し上げている」と修正した。どちらが政治家として高潔か

▼我が国の倫理観が揺れてきているのは間違いあるまい。