伊勢新聞

2019年6月9日(日)

▼日本中がひっくり返っている中で、ひとり県だけすっくりと立っている印象がある。一人の女性が産む子どもの数の指標が全国平均では三年連続下回っているのに、県は三年ぶりに回復。伸び率は全国一位で順位も29位から16位に上げた。まことに喜ばしい

▼「市町の子育て支援や企業での働き方改革など多様な組織の努力の結果」と鈴木英敬知事。いやいや「結婚や妊娠の希望をかなえることを主眼に取り組んで」きた知事のリードのたまものと惜しみなく賛辞を送りたい。分からないものである

▼「―希望をかなえることを主眼に取り組んでいる」のにと言って、結婚願望が減少した県民意識調査の結果に残念がったのはわずか二日前だ。5月のこどもの日に合わせた総務省の発表でも、県の子どもの数は大きく減少した。知事は結婚、出産について「希望がかなう少子化対策をこれまでも取ってきた」と語り、加速の決意を新たにしたものだ

▼「第二子を産む人が増えた影響が大きい」という県の見方が的確なのかどうか。もともとが低ければ伸び率は上がろうし、みんなが下がったのだから相対的に順位も上がる。根拠なしではマユに唾したくもなるが、知事が「第二子の出産ではパートナーの育児参画が重要になる」とする増加要因に異論はない。第一子での体験が第二子への出産に大きく影響するであろうことは確かだからだ

▼県民意識調査ではパートナーの協力は出産理由として低位だが、箸か棒程度の効果は出てきたのかもしれない。非正規雇用が県は多いという。こちらの対策が、本命には違いない。