伊勢新聞

2019年6月7日(金)

▼桑名市教育委員会の44歳の総務課主査がコンビニ店でパンを万引したと現行犯逮捕された。管理栄養士で、小中学校の給食の献立などを担当していたという。教員職ではなかったことに、県教委の廣田恵子教育長は多少胸をなで下ろしているのではないか

▼相次ぐ不祥事や組織ぐるみのミスで信頼は損なわれる一方で、追い込まれるように懲戒処分の指針を厳罰化したのが5月9日。対象は県立学校教職員ら県教委関係機関の職員で、それ以外は市町立学校の県費負担教職員だから、桑名市教委総務課主査が含まれるのかどうかはともかく、改定1カ月で教職員がまた万引というのでは目も当てられない

▼盗品は調理パン1個(販売価格150円)。カバンには別におにぎりなどがあり、ほかに余罪も認めている、という。万引は依存症の余地の大きな犯罪で、その7割は女性ともいうから、女性主査の動機などは今後の捜査に待たなければならないが、1月に桑名市のスーパーから餅1袋や弁当など(販売価格合計2282円)を万引して「これぐらいなら分からないと思った」と語った県立高教員を連想させもする

▼その小額さに類似性を感じさせる。不祥事対策として厳罰化が決められたが、教職員のモラル低下については格別の対策は講じられなかった。厳罰化が対症療法とすると、モラルの確立を点検することは、根治療法ともいえる。厳罰化が犯罪の抑止力になるかどうかには各論もある

▼廣田教育長の心境はともあれ、厳罰化で不祥事対策は一丁上がり、としてしまうことの危うさを物語ってはいる。