伊勢新聞

2019年6月2日(日)

▼三重県だけのことではないが、児童虐待件数が前年度も24・2%(404件)増の2074件で、4年連続過去最多を更新し、2000件の大台を突破した。いつも不思議に思うのは、担当の子育て支援課のコメントである。今年も、増加の要因は野田市の小4女児虐待死で、関心が高まったからだという

▼関心が高まれば増えていくものなのか。虐待そのものが増えているわけではありませんよ、と言っているようである。心理的虐待が前年度比261件増の939件、身体的が67件増の609件などというのはあくまで相談件数の分類で、そんな虐待があったということとはまた別なのか

▼通告したのも、市町や警察、近隣の増加が目立つなどと言われると、この忙しいのにという言葉が隠れていそうで恐縮しないか。一時保護が77件増の501件。チェックリストの整備などで「ためらわずに保護する意識が児相に浸透」したため。危険なケースが増えたからではないらしい

▼加害者も、実母が約900件から1037人に増えた。実父は600件から877件へ。母親の虐待は育児ノイローゼや生活困窮から始まるケースも多い。分析してはいないのかどうか。県の15歳未満人口は今年約5千人ほど減った

▼鈴木英敬知事は少子化対策としての結婚、出産などについて、価値観の押しつけを警戒しながら、希望通りにいかない障壁の除去を加速させるとしている。母親の虐待の増加から見えてくるものもあるのではないか

▼父親の虐待は児童に著しいダメージを与えるとされている。不気味な増加である。