伊勢新聞

2019年6月1日(土)

▼県教委が児童生徒の安全確保を求めるよう学校に通知した。園児散歩の危険箇所調査を開始するとした鈴木英敬知事は保育園児2人が事故死した大津市の現場を視察する

▼同市や川崎市の大事故・事件を受け、県内でも対応の動きが広がる。それらが「当面」の行動であることはやむを得ないとして、地域社会が変容していく中で持続していく恒常的取り組みも検討していかねばなるまい

▼例えば、日常生活の中で子どもたちを見守る「ながら見守り」への近隣住民らへの協力要請である。効果は大きいと期待できるが、近隣で遊ぶ児童生徒は減り、顔見知りや気楽に声を掛けられる関係が希薄している。「見守り」効果を最大限に発揮するためには、児童生徒と住民との間に新たな工夫や仕組みづくりも求められる

▼川崎市の犯人は、中学校卒業後に引きこもり生活に入り51歳まで、同級生はもちろん、近隣住民もその生活実態を知らなかった。親族が市に相談しても、何か働きかけたわけではない。誰からも見えない存在であり、誰も見ようとしない存在だった

▼島根県の調査では引きこもりの半数以上が40歳以上の中高年で、内閣府の調査でも15―39歳が推計51万人に対し40―64歳が同61万人以上。2割が3―5年、5割が7年以上、30年以上も6%いる

▼「小人閑居して不善を為す」は中国・前漢時代の言葉。退職や受験の失敗など、引きこもりの原因はさまざまだが、長期化で精神的問題が生じてくるというのが専門家らの指摘だ

▼地域との連携も考えていかなければならない。