伊勢新聞

<まる見えリポート>防災情報共有システム 紀宝町、災害備え来月運用

三重県紀宝町は、台風などの災害発生時に、町内14地区の避難者数や被災状況などの情報を行政と住民が共有する「町タイムライン防災情報共有システム」を導入し、6月から運用する。事前行動計画(タイムライン)に加え、雨量や河川の水位、災害現場の画像などを集約・共有することは全国的にも珍しい取り組みという。行政と住民が情報を共有することで、双方の連携強化を図る。

同町は平成23年9月の紀伊半島大水害で、熊野川流域で洪水や土石流が発生し、死者・行方不明者各1人のほか、家屋に1000世帯以上の被害があった。

町は水害の教訓を生かそうと27年2月、全国に先駆けて台風などの風水害に備えたタイムラインの連携協定を国土交通省紀南河川国道事務所と同紀勢国道事務所、津地方気象台の3機関と締結した。

タイムラインは、台風が発生した場合、気象状況に合わせて町の担当課や住民がすべき役割を時系列で整理したもの。行動計画を事前に定めることで、迅速な対応につなげる狙いがある。

共有システムでは、パソコンやタブレットなどから町職員や住民が撮影した災害現場の写真のほか各地区の雨量や河川の水位、ダムの放流量や水門の開閉状況などを画像や一覧表で閲覧できる。町は29年度から構想を始め、防災無線のデジタル化や雨量計を7カ所増やして計11カ所に設置したり水位計を3カ所増やして計10カ所に設置したりして整備を進めてきた。

町は6月以降、町内17カ所の避難所にそれぞれタブレットを配布する。これまで住民は被害状況などを電話で町に説明していたが、土砂崩れなどの災害現場を写真で撮ったり避難者数などを数えたりしてタブレットを操作し、町に伝える。

町総務課防災対策室によると、町のタイムラインは、すべき役割が約250項目あり、それぞれ担当課別に定められている。これまで台風などが発生した場合、各課の課長がそのつど集まって会議を開き、完了している業務などを報告していたという。共有システムを導入することで、全職員が各課の業務の状況を色や記号で一目で把握できるようになる。そのため、復旧に向けて迅速に行動できるほか、町職員は町のホームページやツイッター、緊急速報メールの更新なども効率よくできるという。

今月16、17の両日、町職員向けのシステム講習会を町役場で開いた。担当者がスクリーンを使って使い方を説明しながら、職員は手順や操作方法を学んだ。出席した職員からは「必要な情報が集約されているので便利になった」「使う場面があまりないので日頃の訓練が必要」などの意見や感想があった。

26日は、自主防災会向けの共有システム操作説明会を町役場で開いた。参加者からは「細かい情報を知ることができた」という感想のほか、「事例に応じた訓練が必要」「各地区にタイムラインの担当者を置いたらどうか」という意見が出た。

災害時には、行政と住民の連携が重要となる。担当者の町総務課防災対策室の松尾竜哉係長は「住民と情報を共有することで、町がこれまでより迅速な対応ができる」と述べる一方、「災害が発生した場合に職員がきちんとシステムを使いこなせるかが課題になる」と話している。