伊勢新聞

2019年5月27日(月)

▼8年以内に全国3位へ、という全国学力・学習状況調査に対する当初の公約が、学力向上県民運動や独自テストを採用しながらも思うような結果に結びついていないことに、鈴木英敬知事の思いは察するに余りあるが、世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害」を新たな依存症に認定した。思いはますます複雑なのではないか

▼学テが全国平均を下回る原因について、知事は校長の見回りが全国平均から見てかなり低いことなどを指摘するとともに、家庭での学習時間が少ないとして、テレビやビデオを見ている時間が高いことをあげていた。文部科学省は「スマートフォン、ゲームをしている」割合を調査し、時間数が多いほど正答率が低くなるなどと分析している。ゲーム依存は低学年ほど脳に深刻なダメージを与えるという専門機関の研究もある

▼WHOの認定はそれらの指摘に太鼓判を押した格好だが、一方でゲームは、それへの興味をきっかけにプログラマーになったり、ヒットゲームの開発者になって活躍する人を輩出し、eスポーツがオリンピック競技として採用される可能性も出ている。ゲーム感覚を教育に生かす情報技術も進化している

▼6月で5周年を迎える県総合博物館「MieMu」は記念事業の中でオンラインゲームも用意し「幅広い年代の皆さんにお楽しみいただける」(知事)。ポケモンゴーも知事はいち早くダウンロードし、観光施策への活用を探る。一方で学力低下の要因を奨励し、一方では抑制する。難しい選択を迫られる

▼IT施策の明確化が求められる時代ということかもしれない。