伊勢新聞

2019年5月20日(月)

▼地元津市立草生小学校は「窓にそびゆる経ヶ峰 朝な夕なに仰ぎつつ」と校歌にうたう。同東観中学校は「安濃の流れ 水澄みて 黄金の波も さわやかに 経ヶ峯に 雲なびく」、県立津商業高校は「仰ぐは清き 経ヶ峰 高き理想を 目指しゆく」

▼シンボルとして子どものころから親しまれてきた経ケ峰を広範囲に開発し、伊賀市へかけて計24基の風車を建設する計画を東京の再生可能エネルギー事業者「グリーンパワーインベストメント」が進める。常識ある人間の計画とはとても思えないが、東京から見ると、また別なのだろう

▼先だってNHKが興福寺の落慶記念特集を放送していた。中金堂が300年ぶりに復元され、柱は遠くコンゴから運ばれたと淡々と語る。本紙連載『地球の片肺を守る』で、大仲幸作森林・気候変動対策の政策アドバイザーが世界資源研究所のリポートを紹介している。昨年1年で北朝鮮の面積に匹敵する熱帯林が消失した

▼最も減少したのがブラジルで2番目がコンゴ民主共和国。約3分の1は人の手が全く入っていない原生林という。見えなければ、人の心にあまり痛みを感じさせないせいもあるのだろう。興福寺がコンゴから木材を求めても誰も気にしないに違いない

▼布引山地に風力発電施設を計画した「シーテック」が反対の強い亀山市加太地区だけ除外することを発表した。見えない地域でやろうということだろう。櫻井義之市長が「判断に敬意と感謝をする」。見えなければいいと呼応したわけか

▼東京の業者にとっても経ケ峰は原生林同然のものだったのかもしれない。