伊勢新聞

2019年5月19日(日)

▼「ほぼ黒塗り」状態の公文書を公開して不服を申し立てられ、学識経験者や弁護士でつくる三重県情報公開・個人情報保護審査会から一部「開示妥当」の答申を受けた。北川正恭元知事が聞いたら何と言うか

▼県の情報公開条例は、前身の要綱から条例化までが田川県政、より厳しい現条例に改定したのは北川県政である。自身は「ノーコメント」を連発したが、情報公開には積極的だった。「選挙の勝敗を決するのは情報公開度」が持論で、全国市民オンブズマン連絡会議の情報公開ランキングでトップに躍り出た

▼「生活者起点」が公約で「県民サービス」が旗印だった。初当選して就任前に県職員からレクチャーを受け、それら「私の好きそうな言葉がちりばめてくるのです」と職員の〝賢さ〟に舌を巻いた。一方、意識改革で「新しいことは、できない根拠を探し出してくる」として「何十回、何百回繰り返さねば理解されない」

▼その熱意とともに、当時は弁護士を中心にオンブズマン活動が盛んだった。情報公開で入手した資料をもとにした専門的指摘に職員は震え上がった。規則を逸脱することにおびえ、会議は原則公開。資料請求も原則応じる。指導行政は影を潜めた

▼それから17年。説明の不備はもちろん、誤って黒塗りにした部分もあるなど、雑な公文書を平気で公開する。審査会の指摘にも「法人の利益を害する可能性がないかを再び検討した上で判断したい」。「原則公開」は「例外があって当然」の意味になった

▼「民は知らしむべからず」―その緊張感のなさが不祥事につながるのはむろんである。