伊勢新聞

2019年5月18日(土)

▼年末に事件事故が増えるのは珍しくないが、昨年12月29日の国道23号の6人死傷事故には驚かされた。忘年会シーズンの午後10時前。飲食店からタクシーを呼んだのは安全を期す意味もあったろうに、そのタクシーが中央分離帯開口部から対向車線に出ようとして3車線を横切り、直進車と衝突。乗客3人が死亡した。道路沿いの駐車場から出る時の事故は多いが、あの交通量の多い場所を横切るとは―。プロの運転手ならではの事故というものがあることを思い知らされた

▼県警が2度目の実況見分を実施した。路面に水をまいて雨の当日を再現し、下り車線を長時間通行止めにして、事故車種と同系統の車で低速、高速など複数回走行して、挙動や視認性などを確認した。目的は何か

▼現場の中央分離帯の開口部は、事故を受け2月に閉鎖された。三重河川国道事務所は3月の県内中央分離帯開口部交通事故対策会議定例会議で優先順位に含まれていなかった現場も入れて35カ所の閉鎖を決めた

▼三重大前の中央分離帯の開口部が仮設バリケードで閉鎖されたのは、沿道に大型店が開業した十数年前だが、現場の危険性は誰も認識していなかったとみえる。5カ月を経て実況見分する警察の出番は安全に関する限りもはやほとんどない

▼事故は運転手を含め計4人の死者を出し、昨年の交通死者数が前年を一人上回る結果になった。今年の死者数は前年比マイナス4人だが、春の全国交通安全運動が始まって差が急に縮まった印象である。毎年高水準でいたちごっこ繰り返す原因が大事故の中にある気がする。