伊勢新聞

<地球の片肺を守る>REDD+解説編 減り続ける熱帯林

【コンゴ盆地。福島県に匹敵する面積の熱帯林が年々消失している(JICA提供)】

ボンジュール!国際ニュースでは、ロンドンをはじめ世界各地で気候変動対策の強化を求める大規模デモが行われ、千人以上の逮捕者が出たことを伝えています。

そんな中、今度は温暖化の防止や生物多様性の保全に重要な役割を果たす熱帯林について、世界有数の研究機関である世界資源研究所から衝撃的なレポートが提出されました。なんと2018年の1年間だけで1200万ヘクタール(北朝鮮の面積に匹敵)の熱帯林が、農地開発や商業伐採などで消失したというのです。さらに驚いたことに、そのうち約3分の1が、これまで人の手が全く入ってこなかった原生林です。

ちなみに、世界で最も熱帯原生林が減少している国はアマゾンを抱えるブラジル、そして次がコンゴ盆地を抱えるコンゴ民主共和国です。世界の熱帯原生林消失の一割以上が当地で発生しています。

では一体どれほどのスピードで途上国の自然環境が破壊されているのでしょうか。なんと1時間毎に東京ディズニーランド14個分の熱帯林が減少している計算になります。また、今の子供たちが成人する頃には、地球上から原生林がほぼ消滅し、どこに行っても、道路が走り、農地や集落が点在する、そんな環境になってしまうことが予想されています。

ここで、私たちがまずしっかりと理解しなければいけないこと、それは熱帯林の破壊は一時期よく耳にした、過ぎ去った環境問題ではないということです。熱帯林の減少は、過去数十年間ずっと右肩上がりで推移し、特にここ数年は、記録的なレベルが続いています。地球の持続的な発展、そして人類の生存のために、今、最も対策が求められている環境問題の一つが「熱帯林の保全」なのです。

世界有数の森林率(約7割)を誇り、人口の減少や林業の衰退から森林がどんどんと成長し、シカやイノシシなど野生動物も増え過ぎて困っている…そんな日本とは正反対の状況が途上国を中心に起こっています。

幸か不幸か、気候変動対策の強化を求めデモ行進が行われ、多数の逮捕者が出るような事態は今の日本では、ほとんど想定されません。そして、その理由を欧米と日本の間の文化や思想の違いに見つけることは簡単です。しかし、日本と世界の環境問題への温度差、地球の将来に対する関心の度合いが、欧米と日本では、それほどかけ離れてしまっているということも、もしかしたら言えるのではないでしょうか。

ご存知でしょうか。来月に大阪で開催されるG20では、日本が議長国を務め、安全保障や貿易経済などと共に、気候変動が主な議題の一つとして話し合われます。ここコンゴから、環境分野での日本の強力なリーダーシップを期待したいと思います。

【略歴】大仲幸作(おおなか・こうさく) 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。