▼テレビの人気ドラマ「棟居刑事シリーズ・棟居刑事の黙示録」の一場面。集団からいじめられている女子中学生に、佐藤浩市演じる棟居刑事が言う。「本気で怒れ。心の底から怒れば、相手に勝てる」
▼女子中学生は憤然と反撃して、集団をおびえさせ、めでたくボス少女をたたき伏せ、降参させる。そのボス少女が死体で発見され、と物語は展開していく。平成12年作品。刑事のアドバイスは的確だったが、現代にも通用する。鈴鹿で中2男子が集団の異常な暴行で死亡した事件は記憶に新しい
▼茨城県高萩市の中3女子が連休の始めに自殺していた。卓球部顧問の男性教諭の暴言が原因とされるが、部活中、全員に「ばかやろう」「殺すぞ」と言い、部員の肩を小突いたりしていたと女子生徒は書き残した。本人は「行き過ぎた指導だった」と話しているというから威嚇して言う通りにさせるつもりだったのだろう。そのためには本気で怒る姿を見せるのが一番だと、長年の経験が教えてくれていたのかもしれない
▼県の部活動ガイドラインは「体罰を『厳しい指導』として正当化することは、あってはなりません」「研修等を重ね、指導力の向上を図ること」。高萩市の教諭は研修など受けなかったのだろうが、指導力向上のための「研修」というより、それ以前の言語能力の貧困さを感じる
▼いじめの主な原因の一つにも言語能力の貧困があげられている。言葉が出ないから、先に手が出る。短文ツイートの定着で、自分たちだけの刹那的単語がまん延しているが、教師にも言語教育が必要な時代なのかも知れない。