伊勢新聞

2019年5月4日(土)

▼30年ぶりの代替わりで、今年の憲法記念日はやはり第一章「天皇」についてが一番身近に感じられるというものだろう。即位後の天皇陛下のおことばが「憲法にのっとり」で、前の陛下の「憲法を守り」と著しく違うことが、改憲を急ぐ安倍政権の意向を如実に表していると話題にもなった

▼前の陛下の退位後のおことばも、最後の記者会見で何回か使われた「譲位」の言葉はなかった。「国政に関する権能を有しない」とする憲法の規定を踏まえ、天皇の意思で退位する印象を与える「譲位」の言葉を避けられたとされる

▼スクープ、ビデオメッセージで始まった生前退位の流れは異例づくめで、手探りで憲法と調整していく歩みでもあった。「国政への権能」か言論の自由かで、憲法上議論されたが、国民の大多数の賛成で「国政への権能」問題をいかにクリアするかに政府の精力が注がれた

▼一、二日実施した共同通信世論調査で、天皇の生前退位は今後も「認めるべきだ」が九割以上に達した。一方で、天皇制のあり方について「今の象徴のままでよい」も八割を占めた

▼女性天皇も約八割が賛成という。一歩前進か、問題の先送りか。生身の人間に象徴を担わせることに最低限の修正を加えるだけで、現状維持がよいというわけだ。皇室には基本的人権はないとされている。言論の自由が危ういことも、退位の流れが示した。秋篠宮家の長女眞子さまの結婚問題も「婚姻は両性の合意のみ」の憲法24条と衝突している

▼「今のままでよい」は生前退位の支持と対立する可能性を今年は少し考えてみるのもいい。