伊勢新聞

2019年5月2日(木)

▼代替わりの儀式が粛々と進み、「令和」の一ページが書き込まれていく

▼令和には「一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせる日本でありたいとの願いが込められています」と鈴木英敬知事。カウントダウンが起きたのも、みやびな字体とすっきりした響きの語感が、大型の新年を迎えるような明るい気持ちにさせるからだろう

▼「令」に、多くの学者、政治家が憲法違反を疑った安全保障関連法の強行採決を頻発させる意味合いはなく、「和」に「こんな人たち」を排除、黙らせるそんたくで、がんじがらめになることのない世相を、心から願わずにはいられない

▼「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに心から安堵しています」と、前の天皇陛下は昨年12月の在位中最後の天皇誕生日の記者会見で、平和への強い思いを語られた。「心配・不安がなく、心が安らかなこと」(広辞苑)を意味する「安心」ではなく、緊張から解き放たれたというニュアンスのある「安堵」を使われたことに、より深いお気持ちを感じたりもする

▼「戦争の世紀」とされる昭和のうち誰もが二度と戦争はごめんだという思いが強かった終戦からの40年に比べ、平和のためにはある程度の武力行使、武力紛争もやむを得ないという機運が台頭してきた平成の30年でもあった。世界も、日本だけが平和であればいいという考え方を許さなくなっている

▼代替わりに際しての与野党の談話は、いずれも平和の継続を誓った。「平和」の名のもとに国がどう導びかれていくか。私たちはなお緊張から解き放たれることなく、見ていかねばならない。