伊勢新聞

2019年4月26日(金)

▼大事件・大事故というのは伝染するものなのか。そう思わせる最近の交通事故である。東京・池袋で19日、乗用車が暴走して横断歩道を自転車で渡っていた母子を死亡させた

▼21日は神戸市で、市営バスが赤信号の先の横断歩道に突っ込み、男女2人が死亡。23日、今度は千葉県木更津市で横断歩道を渡っていた小3女児2人をはねて1人を死亡させた。いずれもブレーキ痕がなかった

▼同日は津市の県道で右折待ちをしていた乗用車に軽トラックが追突。押し出された車が対向してきた軽トラックと衝突している。追突した軽トラの運転手は意識不明の重体。目立ったけがはなく、追突前に意識を失っていた可能性があるという

▼池袋で事故を起こした男性は87歳で足を痛めていた。「アクセルが戻らなかった」と話していたが、車に故障はなかった。市営バス運転手は64歳で「ブレーキを踏んでいたが急発進した」と言うが、ブレーキに問題は見つかっていない。木更津市は49歳。「ブレーキを踏んだが間に合わなかった」。その供述を裏付ける痕跡はない

▼年齢も状況も異なる3人がブレーキとアクセルを踏み間違えて大惨事を起こした可能性が高い。プロから障害者まで、錯覚を現実と思い込んで迷いがなかったことをうかがわせるが、高齢者に多いと見られる錯覚対策に当局はどれだけ取り組んできたか

▼最も効果的とされるのはブレーキとアクセルで左右の足を踏み分けること。車の構造がそうなっていたら池袋の事故は起きなかったのではないか。自動運転より先に力を入れてよかった。