2019年4月23日(火)

▼安倍晋三首相が大阪12区の衆院選補欠選挙の応援で大阪入りし、街頭演説をこなした後、市内の劇場を訪れ、吉本新喜劇に飛び入り出演した

▼経済に詳しい人として登場。本物か問われて「ほんまに本物」と返し、6月の20カ国・地域首脳会議に触れ「まあるく収めまっせ」などとアピールした。会場が「沸く」「白ける」など、状況はメディアで異なるが、おおむね好感をもって迎えられたのだろう

▼いつもながら安倍政権の情報戦略の巧みさに舌を巻く。選挙の敗北を織り込んだ上の演出に違いない。安倍首相には成功体験がある。リオ五輪閉会式にゲームのキャラクター、マリオにふんして登場し、世界の喝采を浴びた。新元号「令和」の決定に際して初の国書からの引用を果たし、内閣支持率を共同通信調査で5割台に回復させた

▼民主党政権当時、急落する支持率の原因を問われて岡田克也幹事長(当時)は国会での質疑をあげた。テレビ中継のたびに支持率は下がるというのである。自民党政権でも事情は違わぬだろうが、安倍政権は人気を急上昇させる妙手に開眼した

▼国際NGO「国境なき記者団」が発表した今年の「報道の自由度ランキング」で、日本は前年と同じ67位だったが、このところ報道界は無視状態のようだ。自民党が5年前、公平中立の選挙報道を報道機関に要請して以来、特にテレビ各社の自主規制が強まり、芸人の発言もしばしば問題になった

▼河原者と呼ばれた中世以来、芸事の世界は反権力が色濃く流れていたが、令と和の強調で、自由の牙城は次第に切り崩されているようだ。