伊勢新聞

2019年4月20日(土)

▼全国で唯一、電子投票を続けてきた青森県六戸町が21日投開票の町議選から休止することになり、実施自治体が姿を消す。まことに残念、と言ったら心にもないことをと言われるか。四日市市が平成16年の市長選、市議選で実施したことについての論評記事を不満とするシステム運営業者から訴えられたことがあるからだ

▼最高裁まで争ったあげくの本紙全面勝訴だったが、思えば不毛な争いだった。報道についてはもちろん、選挙制度というものに基本的理解がなかったのではないか

▼本紙が指摘したのはシステム運営業者の代表が別に特定候補者の選挙戦術を請け負う事業も展開していて、市は公平公正をどう担保しているのか。またシステムを企業秘密で非公開としていることが透明性や安全性、信頼性の観点からどうかということ。市も「市民に納得してもらえる説明が十分できていない」としている

▼問いただしたのは市の見解だが、やり直し選挙があったためか、業者が過敏に反応し、電子投票の普及を妨害する悪意があると申し立て、システムの特性を説明するなど、かみ合わぬやり取りが続いた

▼今回の知事選挙でも四日市市の結了時間は、津市に次いで2番目の遅さ。が、当時はティータイムは取るなど、市民から怒声が飛んだこともある

▼電子投票は改善の有力手段だったが、業者に公的機関に準ずる意識が欠けていた。国政選挙を対象外とし、地方選挙を実験台にするかのような法律が大手の参入意欲を抑制した感もある

▼インターネット投票が検討される中での寂しい電子投票の幕切れである。