伊勢新聞

2019年4月18日(木)

▼東員町長選で無投票3選が決まった現職の水谷俊郎氏は「楽な選挙だったからこそ、責任は重くなる」と気を引き締めた。「こんな楽な選挙は初めて」と語ったという報道もある

▼県議3期を務めた後、知事選、四日市市長選で苦杯をなめ、平成23年の町長選初出馬で、4人の激戦を制した。27年選の一騎打ちは800票余の差で再選を果たした。厳しい戦いの連続が、県議2期目の無投票当選を忘れさせたのかもしれない

▼平成3年の県議選初出馬は父親の地盤を継いだのだが、当時は県議と町長が主導権を競って犬猿の仲だった。町の県への要望は、県職員が県議の顔色をうかがうため通らない。あぐねて隣接選挙区の若手県議に依頼し、うっかり引き受けて逆鱗に触れた。のち副議長ポストを逃している

▼町の勢力は二分され、選挙で怪文書が飛び交った。水谷氏にとって、その影響は特に町長選で強く作用したに違いない。初戦はむろん、2期目の激戦がそのことを物語るが、3期目にして、情勢に変化が出てきたか。選挙の意義はひとまず置いて、被選挙人にとって無投票は何物にも代えがたいとしても、手放しで「楽な選挙」と言ったところに、喜びとはまた別の感慨が口をついた気がしなくもない

▼島根県知事選では「竹下・青木王国」の堅城が崩れた。福岡知事選では麻生太郎副総理支援候補が惨敗。和歌山県議選では、二階俊博自民党幹事長の秘書経験もある8期のベテラン県議が共産新人に敗れた。平成最後の町長選で昭和から続いた東員町の政治地図も様変わりの時を迎えているのかもしれない。