伊勢新聞

2019年4月17日(火)

▼「県庁所在地の市長選が無投票というのはどういうことか」と、最近赴任した全国紙の支局長に聞かれて沈黙した。質問なのだが詰問調で、「ごめんなさい」と言わなければならないような気にさせられたからだ。「市について本気で考える人がいないのか」と続く。なに、無投票は2回連続のことで、なんてとても言えない

▼統一地方選後半戦の86市長選のうち、県庁所在地は5つ。うち無投票は高松市と津市の2つ。残り81市長選のうちの27市長選も無投票で、鈴鹿市も含む。無投票は前回より微増だが、県の場合は10割と言えなくもない。市の将来を問う論戦も有権者の意思の反映もない。最も身近な選挙さえ無関心層が増えている気がしてくる

▼当選が決まって、前葉泰幸市長は「おごることなく謙虚に」。例え大勝利でも、選挙をすれば批判票、無関心層が数字で示される。「身の引き締まる思い」(鈴木英敬知事)という言葉にもなる。意味は同じでも、おごり、高慢などの言葉が頭をもたげたということでもあろう

▼成果として小中学校へのエアコン設置や市産業・スポーツセンター開業をあげた。潤沢な合併特例債が活用できたからだが、3期の公約は幼稚園へのエアコン設置や地域枠職員の採用など新鮮味はない。「将来を見据え一歩先を行く市政を」の具体策は見えない

▼この4月、津市は市制130周年を迎えた。広報紙に掲載された市長コラムはもっぱら歴史の誇示にとどまる。令和へは「県都としてふさわしい市民生活の実現に第一歩を」。だから「謙虚に」ということかもしれない。