伊勢新聞

2019年4月12日(金)

▼足の悪い83歳の女性は食料品はスーパーの宅配サービスを利用し、障害を持つ76歳の女性は、市役所まで4キロを結ぶ2本の公共交通機関の乗り継ぎ時間の悪さで歩かざるを得ないことも。毎日通院しなければならない90歳の男性も、移動手段が確保できず3週間に1回がやっと

▼限界集落の話ではない。県内第2の人口を擁する鈴鹿市でのことだ。北を四日市市に隣接する高岡台の大規模住宅団地のうち、最初に開発された三丁目は1年前、利用者減でバス路線が廃止になった。高齢者が日常生活に困難をきたす

▼津市に隣接する南の大規模団地でも、中央に位置する公園で平成28年、中2男子が4人の少年に暴行され死亡する事件があった。かつては大勢の家族でにぎわったが、今は日中でも人けもなく、少年らが争うのに格好の場所を提供している

▼成人した子どもらは団地を出て、高齢者だけの家族が増え、団地内のショッピングセンターは撤退した。バスの便数も減って、街中に引っ越しする人で空き家が増えていく。本紙『鈴鹿市政の課題』によると、市も交通空白地対策に乗り出し国の補助基準頼みからの脱却を目指すが、乗合タクシーや地域のボランティア輸送、民間企業のバス運行サービスなど、いまさらのアイデアが並ぶ

▼先進的な他市の事例がもはや参考になるかどうか。「交通空白地対策」などという固定観念では実効ある施策などは出まい。保健・福祉政策や地域振興、まちづくり、広域行政など、市政の中心に位置づけねば、事態はさらに深刻になろう。鈴鹿市に限った話ではない。