伊勢新聞

2019年4月8日(月)

▼コンゴ民主共和国から本紙に「地球の片肺を守る~コンゴ民主共和国環境省に赴任して」を連載する大仲幸作さんが、コンゴ盆地の熱帯林研究の拠点、三階建ての立派な研究棟が電気もなく、実験器具や設備が荒れ放題で放置され、廃虚と化した状態を報告していた

▼独立後の独裁政権と度重なる紛争で、90年の歴史ある研究所が風前のともしび。最近も大統領選を巡り混乱したばかり。駆け付け警護が自衛隊の新たな任務として加えられた一方で、部隊を撤退した南スーダンと北東部で接する

▼現地で知事を表敬し「コンゴ盆地の森林は地球の宝。その保全に日本がこうして支援を行っている」と伝えたという。滅多に見かけない日本人が来たことでの表敬だったという。昨年300年ぶりに再建された興福寺中金堂(奈良県)の柱、数十本がコンゴ盆地から運ばれていることも報告されていた

▼「地球の片肺を守る」のタイトルは、アフリカ女性初のノーベル賞受賞者、ワンガリ・マータイさんが地球温暖化を防ぐ熱帯雨林の保護を唱え、コンゴ盆地をアマゾン川流域、東南アジアとともに「地球を守る三つの肺」と呼んだことに由来するが、多くの野生動物が絶滅の危機に瀕している。象牙の密猟で激減するアフリカゾウだが、コンゴに多く生息したマルミミゾウはほとんど姿を消している

▼日本も森林保護に協力はしているが、象牙密猟の元凶とも言われる。森林資源も他国を経由し多くが持ち込まれ、ザルに水を注ぐの感。熱帯林研究の現状を日本に伝えると言い残した大仲さんの思いを無駄にしてはなるまい。