伊勢新聞

2019年4月6日(土)

▼「監視カメラの設置」など、意表を突く条件でカルロス・ゴーン日産前会長の異例の保釈に弁護団が成功すると、東京地検特捜部もまた、保釈中の再逮捕という異例の手段で身柄を拘束した。竜虎相打つの様相。前会長の弁護人、弘中惇一郎弁護士が怒りの記者会見を開いた

▼事件の注目度が高いとはいえ、弁護側が頻繁に会見を開くのも事件の特徴。弘中弁護士はロス疑惑や薬害エイズ、郵便制度悪用事件などの経験で、捜査側から流される一方的なマスコミ情報での世論形成が、証人の証言を偏向させるとして、積極的に会見する理由を著書で解説している

▼シャープ三重工場(多気町)で働く日系フィリピン人ら約150人が勤務日数減で賃金が激減していると、三重一般労働組合(ユニオンみえ)が会見した。自己都合退職を狙った実質雇い止めだなどと訴えている。労働組合が闘争ではなく世論に訴える戦略を採るのは外国人労働者という特殊性もあるか。同亀山工場では問題発覚から1年後の県の対応で、雇い止め1000人と言われながら、就職相談会に訪れたのは20人弱だった。じっくり闘争を構えてはいられない

▼派遣法改正で、闘争環境も劣化している。派遣先企業を実質親会社と見なして、労働条件に責任を持たせるのは労働運動の成果だが、派遣会社に企業体質改善を義務づけた結果、派遣先との関係が建前上、薄れてきた。シャープは「直接雇用関係がなく、コメントする立場にない」。なかなか言えないせりふだった

▼下請法は親事業者の一方的条件変更を禁じている。ちぐはぐな社会ではある。