伊勢新聞

2019年4月5日(金)

▼福井県の僧侶が僧衣着用で運転して道交法施行規則細則違反で交通違反切符(青切符)を切られた問題で、同県警は「履物または衣服」の禁止事項から「衣服」部分を削除し、青切符を無効にした

▼削除理由は「禁止対象が分かりにくい」、無効理由は「事実が認定できなかった」という。分かりにくいからどんな服装でもいいのか。履物なら分かりやすいのか。法には「不遡及の原則」すなわち施行以前の事案には適用しない原則がある。分かりにくい理由を並べ立てたものだ

▼細則は、法の適用範囲を最も具体的に定めたものだが、道交法の場合は各都道府県の公安委員会が定める仕組みで、全国一律ではない。履物、服装規定は1都2府を含め、ないのが多数派。取り締まる側の一方的都合をより色濃く表してはいよう

▼三重県警察もむろん少数派である。白バイに停車を命じられた時、サンダル履きを見とがめられ「本当はダメなんだが」と言っただけで、青切符を切ることはなかった。県の施行規則細則は「運転の妨げとなるような衣服を着用し、又は下駄その他の運転操作に支障のあるはき物」を禁じている。福井県とは履物と衣服の記述順位が逆

▼どちらをより危険と見るか、県警単位で違うのかと突っ込みたくなるが、どんな衣服が取り締まり対象なのかという現場の問いに、福井県警は僧衣を例示していたのではないか。三重県警の場合は「サンダルぐらいは」と指導していたのかもしれない

▼どろ土を落として道路に入るようにという規定もあった。もっともだが、時代には合わなくなっている気はする。