伊勢新聞

2019年3月30日(土)

▼ほれ、ほれ、このことよ、と鈴木英敬知事は腹の中で大きくうなずいたのではないか。過度なふるさと納税返礼品に対する総務省の再三の自粛要請を無視してきた大阪府泉佐野市など四市町が、特別交付税をばっさり減額された

▼改正地方税法の成立で、返礼品調達費が寄付額の三割を超えた場合は税の優遇措置の対象外。税額控除を受けられる自治体を指定する基準も発表された。いずれも、適否の判断をするのは総務省だ。特別交付税の減額については、石田真敏総務相が「財源配分の均衡を図るもので、ペナルティーではない」

▼真珠の返礼品を中止するよう要請してきた総務省に対し、鳥羽市議会は反対を議決した。鈴木知事は「思いも理解できる」「要請を重く受け止めなければならない」として鳥羽、志摩両市と総務省との協議の場を設け、国の力が強かったりするので県が介在し「落としどころを探る」

▼結果は、総務省の強硬姿勢を思い知らされただけで、中止を余儀なくされた。県はほとんど口を出さなかったと言われたが、そのことが「ほれ、このことよ」ということではないか。思うように法律を作る権限を持つ国を相手に、地方がまともに戦って勝てるはずがないことを、無言のうちに示したのである

▼地方競争の時代だと言っても、現実に競争になったら政府はどうするかが一連のふるさと納税狂騒曲である。欠点だらけの制度にはほおかぶり。泉佐野市は、アマゾンギフト券を返礼品にして「100億円還元 閉店キャンペーン!」

▼「ほれ、このことよ」という声が聞こえてくる気がするのである。