伊勢新聞

2019年3月26日(火)

▼コーヒーを初めて飲んだのは高校の時で、場所は喫茶店。アルコールなどを提供する店と区別するため純喫茶と呼んだ。往来とは分厚く黒いドアガラスで遮断され、内装はシャンデリアなどを装備して別世界の趣。大人になった気がした

▼味は苦く、砂糖とミルクをたっぷり入れた。ブラックにしたのは砂糖の取りすぎが問題になったころから。通を気取りたい気持ちも強く、苦さを持て余した

▼コーヒー代は場所代と心得、日常生活から隔離された雰囲気が好きで、往来に張り出す本家パリ風の喫茶店などは敬遠した。昭和56年をピークに平成26年には喫茶店は半減。そんな純喫茶は絶滅危惧種になった

▼その間、すっかりコーヒーの味を覚えたが、今風喫茶店にはなじめない。自宅でいれてみたが、何となく味気ない。たまたま子どもと入ったファストフード店のコーヒーが意外にうまく、店内のミニ遊園地で遊ぶ子どもを見ながら飲むコーヒーになじんだ。固いイスも気軽ではある

▼コンビニのコーヒーもいけると気づくのは間もなくだった。好きな雰囲気の喫茶店がなくなって、コーヒーの味だけ店に求めるようになったということか

▼ハチミツ採取を体験できるカフェが伊勢市にできた。津市には服や靴、バッグがそろうファッション&カフェも。いずれもハチミツ体験、ファッションがメーンのようだが、ミツバチが飛び交うあるいはファッション製品を見ながら、好きなコーヒーを飲み歩くのも悪くない

▼雰囲気が仲立ちしたコーヒー人生。コーヒーが縁で関心の幅を広げる。時世時節かもしれない。