伊勢新聞

<三重県議選・激戦区を行く>勢力拡大狙う自民 懸念残る票の〝食い合い〟

川崎二郎衆院議員のお膝元で自民支持層が厚い伊賀市だが、近年の選挙は苦戦を強いられている。市議会では圧倒的な勢力を誇るが、前回市長選は自民候補が落選。川崎氏も前回衆院選は比例復活だった。

長きにわたって維持した伊賀市選挙区(定数3)の2議席も、前回は1議席にとどまった。県連は2議席奪還を目指すが、前回の当選者も〝滑り込み〟だった以上は、自民そのものの勢力拡大が問われる。

前回初当選を果たした木津だが、3位当選だったこともあって気を引き締める。県議会の定数問題で「一度も選挙をせずに定数を戻した」という主張には「有権者の関心が高く、手応えを感じる」という。

自民2氏が票のすみ分け図れるかも課題だ。自民関係者は「旧阿山町出身の木津は郡部、旧上野市出身の川野は都市部という線引きを設けていたが、既に混戦の様相」とし、票の〝食い合い〟を懸念する。

自民の新人、川野の得票が注目される。昨秋、大阪から伊賀に戻ったばかりで「政治の世界は右も左も分からない」といい、活動も「かつての友人から探した」という、まさにゼロからのスタートだった。

とはいえ、地道な企業訪問や川崎議員の支援などで知名度は着実に浸透しているようだ。「謙虚な姿勢で有権者の受けが良い」と評価する自民関係者も。終盤戦まで〝伸び〟を維持できるかが課題となる。

前回選挙で自民の現職を落選に追い込んだのが元社民県連代表の稲森。「何かと目立つ存在」(市議)で、市議時代から続ける市役所前での街頭演説やあいさつ回りなど、日ごろから支持拡大に奔走する。

稲森が描くのは、岡本栄市長が自民と旧民進系の2氏を破って再選を決めた前回市長選の構図。稲森は岡本を当選させた立役者で、市長選と同じく「しがらみのない政治」を打ち出して浮動票を取り込む。

前回市長選で落選した森野は、連合三重や新政みえなどの推薦を受けて県議会への復帰を目指す。前回県議選はトップ当選を果たすなど、強い地盤がありつつも「決して楽観視はしていない」と強調する。

背景の一つは「いずれ伊賀市も対象に上がる」(県議会関係者)とされる県議会の定数減。将来的に自民が候補者を一本化すればトップの座を奪われることは必至。支持基盤の引き締めが今後を左右する。