「後から後から誤りが判明する事態となり、対応のプロセスで混乱や不信を招いた。責任を極めて重く感じている」。昨年9月27日の三重県議会本会議冒頭、鈴木英敬知事は壇上で、深々と頭を下げた。
知事が本会議場で発言を求めて謝罪するのは異例の事態だった。その2日前には教育長、県警本部長と共に正副議長に謝罪したが、これも異例。職員からは「そこまでするとは」と驚きの声が上がった。
謝罪した直接の理由は障害者雇用率の算定誤り。県や県教委、県警で相次いで発覚したが、中でも県教委は深刻だった。当初は「算定誤りはない」と回答していたが、その後の再調査で次々と発覚した。
ただ、謝罪の背景にある不祥事は、それだけではない。昨年6月には、近鉄名古屋駅のホームで駅員の首を絞めたとして、当時の税務企画課課長=依願退職=が暴行容疑で愛知県警に現行犯逮捕された。
その後も不祥事は続く。今年2月には、工業研究所の主幹研究員が懲戒免職となったが、この職員は昨年も万引で停職処分に。「(再犯を)予見できなかった」(人事課)という課題も浮かび上がった。
今月は、児童相談センターの事務処理ミスで中止した一般競争入札で、入札参加者に虚偽の説明をしたことが発覚。虚偽の説明は複数の幹部らが話し合いで決めていたことから、組織的隠蔽(いんぺい)も疑われた。
鈴木知事の2期目が始まった27年度以降、これまで懲戒処分となった県職員は21人に上る。鳥羽港改修工事の公文書改ざん問題が発覚するなどした1期目でも、懲戒処分の職員は18人だった。
鈴木知事は2期目も相次ぐ不祥事に悩まされた。鳥羽港の問題が起きた1期目に続き、今期も障害者雇用率の算定誤りへの責任として、自らの給料を減額。記者会見では不祥事への所感を問われ続けた。
その危機感を全ての職員が共有しているとは言えない。鈴木知事が議場で深々と頭を下げた後も不祥事が相次いだことを見れば明らかだ。鈴木知事も「(組織の)緩みがゼロとは言いがたい」と認める。
伊勢志摩サミットの誘致をはじめ、自らの能力を最大限に生かそうと努める鈴木知事だが、足元の危機管理が揺らいだことは否定できない。不祥事の対策に鈴木知事〝らしさ〟は生かされたのだろうか。