平成8年9月、三重県教委は鳥羽市安楽島町の海岸で、県内で初めて恐竜の化石が見つかったと発表した。発見部位は、いずれも左右の上腕骨(長さ約115センチ)や大腿(だいたい)骨(128センチ)、尾椎(びつい、15―18センチ)4個など計12カ所。
その後の調査で、化石は白亜紀前期(1億3800年前)の大型草食恐竜である「竜脚類」の一種「ティタノサウルス形類」の物と判明。化石から推測された大きさは全長16―18メートル、体重31、2トン。「トバリュウ」の愛称で呼ばれ、化石は津市一身田の県総合博物館「MieMu(みえむ)」に展示されている。
発見者は4人のアマチュア化石研究家。恐竜の化石を見付けようと集まった4人は、偶然にも海岸に転がっていた化石のかけらを発見した。最初は木の化石と考えたが、専門家に持ち込むと恐竜化石だと分かった。
国内で初めて見つかった恐竜化石は、昭和53年に岩手県岩泉町の茂師で発掘されたモシリュウ。ただ、トバリュウ発掘調査団の一員を務めた、みえむの学芸員(地学)津村善博さん(70)によると、トバリュウ発見の約20年前に当たる昭和51年ごろ、別の男性研究家がトバリュウの化石を見付けていたという。
男性はトバリュウの化石を割り、一部を採取したが木の化石と考えていた。報道を受け、調査団に化石を持ち込むと「発掘された化石の割れ目とぴったり一致。当時恐竜化石と分かっていれば、トバリュウが『日本初』の発見になっていたかもしれない」(津村さん)。
惜しくも日本初を逃したトバリュウだが、化石は今後も見つかる可能性があるという。時代は変わっても「夢」はまだ転がっているかもしれない。