伊勢新聞

2019年3月2日(土)

▼鈴木英敬知事の故事、ことわざ好きも、拍車がかかってきたようだ。何かに頼りたくなる心境の表れ、かな

▼県の将来を悲観的に捉える吉川新県議に対し「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである」として、前向きに取り組めと鼓舞した。「幸福論」を著わしたフランスの哲学者アランの言葉という。幸福日本一県を掲げる知事としては同時に自身を鼓舞する言葉でもあろう

▼故事、ことわざは人生の処世訓だが、真逆を意味するたぐいも存在する。悲観主義すなわちペシミズムについて「見え透いた希望と見苦しい微笑とを特徴とする楽天主義者が、うんざりするほどのさばっているところから、その様を眺める者の確信の上に、否も応もなく押し付けられる人生観」と言ったのは米国の作家、ジャーナリストのビアスだ

▼コップ半分の水をまだ半分ある、もう半分しかないの見方で楽観、悲観は分かれるといわれる。前者はおおまかでアバウト、後者は細部に気づき、気に病む人が多いとされる。営業活動で好成績を収めるのは楽天主義というのが大方の評価。そんなモーレツ社員、会社人間が高度成長を支え、そうした生き方が押しつけられてはきた

▼ビアスは冷笑、毒舌で知られ、前向きな生き方とは無縁かも知れぬが、安倍首相は3年前の真珠湾訪問で、所感にビアスの言葉と断って「勇者は勇者を敬う」。わざわざ「辛らつのビアス」を引用したことに意味があるということか

▼ビアスは「格言」について「歯の弱いものにもかめるように骨を抜き取った人生の知恵」とも言っている。