伊勢新聞

2019年2月17日(日)

▼会社法違反(特別背任)罪などで3カ月近く拘束されているカルロス・ゴーン前日産自動車会長の弁護団に弘中惇一郎弁護士らが加わった

▼「無罪請負人」の異名が報じられたが、異名自体はマスコミがつけたもので、本人は抵抗があると、同名の著書の中で「返上〝無罪請負人〟」などと言っている。なるほど異名には実力を認めるニュアンスがあるものの、ちゃかした印象も否めない。「善悪は別にして」の含みさえ感じさせる

▼マスコミ先行と言われたロス疑惑や、薬害エイズの元凶として総攻撃した元帝京大副学長、民意の反映とされる検察審査会の決定で強制起訴した小沢氏などを次々無罪にされ、検察・警察とメディアがタッグを組んだこれら戦いが一番苦しかったなどと言われた。バツの悪さが命名にあるのかもしれない

▼ロス疑惑事件で、弘中氏が「予測を超えた事態」と言うのは警視庁が詐欺容疑で再逮捕したことだ。犯罪事実ごとに1回だけ許される「一罪一勾留の原則」が破られた。勾留延長で自白を取るためである。〝人質司法〟と呼ばれるこの手法はその後常態化し、今回も検察側は、当然のように有価証券虚偽報告書記載罪容疑で2度逮捕した

▼刑事事件は殺人、強盗など以外に毛色の変わったものがあると、弘中氏は言う。政治、経済路線の一方の中心人物に狙いをつけて事件化し、争いをもう一方の有利にするのもその一つ。鈴木宗男、小沢事件をあげる

▼ゴーン前会長事件も、報道は当初の戸惑いから〝犯行確認競争〟へ勢いを強める。弘中氏が弁護に加わるのはある意味必然と言えよう。