伊勢新聞

<検証・三重県予算>〝刺客〟投入も成果なし 高止まりのシステム費

【高額な「システム関連経費」に悩まされる県庁=津市広明町で】

三重県庁内のネットワークやサーバーに関連する業務を担う地域連携部の情報システム課に、一人の〝刺客〟が送り込まれた―。昨年4月の人事異動で、そんなうわさが一部の職員の間で流れていた。

その〝刺客〟とは、かつて財政課や監査委員事務局に在籍した高松基子課長。「財政課時代、彼女が査定した後にはぺんぺん草も生えなかった」(県職員)と言われるほど、予算にシビアな人物だ。

庁内のシステムに関連する経費は年間で40億円に上る。高額であるほど、コスト削減の余地は大きい。この経費を絞り込めれば「かつてない財政難」(財政課)の県にとっては大きな救いとなる。

高松氏の就任から約1年。〝刺客〟によって何らかの成果は上がったのか。期待を胸に尋ねたが、結果は例年通り。平成31年度当初予算案では、システム関連費として48億円が要求された。

高松氏も「専門性の高いシステムの分野を広い目で見てほしいとの思いは託されていただろう」と認める。ところが、システム関連費への認識を問うても「一律にどうとは言えない」と語るのみだ。

システム関連費のコスト削減には専門性の壁が立ちはだかるが、査定の仕組みは他の事業と同じ。「仕方がないと言ったとたんにコスト削減は止まる。常に必要な予算か疑わなければ」(県職員)

削減の余地はないのか。システム関連費の要求は特別な審査を通す制度があるが、審査する業者に年間で約2200万円の契約料を支払っている。制度の導入から12年が経過するが、検証の痕跡はない。

「県財政の健全化に向けた集中取組」にはシステム関連費を「厳しく見直す」とあるが、具体的な記述は「市販ソフトで代用できないか」とする程度。14日に公表した進捗(しんちょく)状況でも成果は見てとれない。

危機感の共有にも課題がありそうだ。同課の職員らは「かつてに比べたら大幅に減った」「他県と比べても高くはない」と口々に説明する。あくまで毎年の40億円は「削減の結果」というスタンスだ。

31年度当初予算案のシステム関連費では、1台当たり11万円で約1500台の職員用パソコンを購入するそうだ。単純計算で1億7千万円に上る。前年度も同じ金額で同じ台数を購入していた。

「パソコンの使われ方を詳細には把握していないので、安いのか、高いのかというコメントは控える」と高松氏。少なくとも取材の範囲では、財政課時代の〝熱意〟を感じ取ることはできなかった。