伊勢新聞

2019年2月13日(水)

▼人権施策を所管する県の環境生活部長を2年務めたOBに「このところ部長が1年で交代する。人権施策軽視の表れではないか」と言ってから「あなたは違ったけれど」と言い足したことがある。「私が間に合わなかったからではないか」と返され大笑いした

▼本紙『まる見えリポート・県庁は人事の季節』を読んで、笑い事でもない気がした。1年目の現環境生活部長が、定年まで残り1年にもかかわらず、人事予想で戦略企画部長への横滑りも取りざたされているらしい。人事は活性化の有力な手段であり、事務系ポストは誰でも務まる要素もあるから、1年交代が必ずしも問題というわけではないが、「腰かけポスト」と称されているというなら話は別だろう

▼2年で一仕事仕上げて交代あるいは卒業という原則が変わり、仕事に取り組む姿勢が変質したことになる。新任の部長が就くポストをかつては「昇格ポスト」と呼んだ

▼商工労働部長などが対象だったが、同部を継承する雇用経済部は今「大事業部」と言われるらしい。県の重点施策の変遷とポストの重みは不可分の関係だろうが、「昇格」と「腰かけ」では、意識の上で天地の開きがある

▼以前はサミット、現在は国民体育大会関連人事が鈴木英敬知事の最大関心事であることも『人事の季節』でうかがえる。その路線に沿った人事が、職員にとって日の当たる道でもあるらしい。目玉施策の提示と実現が知事の使命であることは確かだが、毛色の異なる目先の施策への過度な評価は本来の行政に腰が定まらぬことにもなりかねない

▼兆しはすでに見られる。