伊勢新聞

2019年2月10日(日)

▼珍しく、と言っては失礼か。素早い対応である。野田市の小四女児死亡事件で、父親の暴力からの助けを求める児童のアンケート用紙を父親の脅しに屈して市教委が開示したことを受けて廣田恵子県教育長が県教育委員会に提出したばかりの改定「県いじめ防止基本方針」にアンケート保護を追記する考えを示した

▼寝耳に水ではあったろう。県いじめ防止条例も、それに基づく県教委の「基本方針」も、保護者とは連携をうたい、虐待などは想定していない。そちらは虐待防止条例にお任せと思ったかどうか。改定は「定義」中心だったのに、いじめ早期発見のためのアンケートの中から虐待の訴えが飛び出したのである

▼いじめアンケートは多くの教育委員会で秘密、隠ぺいの対象である。被害児童の保護者の切実な開示要請に対して、甚だしきは破棄したと虚偽回答した例もある

▼父親への開示など「絶対にしてはならないと(教職員ら)全員が認識しているはず。威圧的な行為に屈してはならない」(廣田教育長)というのは子どもを守るためだろうが、教職員個人が危険を感じたらあっさりコピーを渡してしまったのだ

▼身の危険を感じて言いなりになった場合、教育者としてはともかく、法的には被害者と言えなくもない。処分できるか。県教委としては放置できない問題だろう

▼学校と児童相談所との連携の悪さは、たびたび指摘される。同居男性が傷害致死容疑で逮捕された外国籍小学生も、姉とともに除籍になっていた。組織防衛などと勘違いされないためにも、追記はアンケートに限定する必要はあるまい。