伊勢新聞

2019年2月9日(土)

▼何気なく見てきた言葉だが、思わず立ち止まりたくなることもある。「包括連携協定」という言葉だ。地方自治体の締結例がめっきり増えた。自治体と民間企業等が協力して地域が抱える幅広い課題解決をめざす態勢づくりを意味しようが、津市は、三重弁護士会と市教委との間で包括連携協定を結ぶという

▼狙いは地域や市民生活の課題解決ではなく教員の負担軽減。いじめや不登校が増え、保護者や地域からの要望も増加した。対応に追われる教諭を救うため、弁護士の協力を仰ぎ、法的助言などを得るという。児童生徒や保護者相手に、けんか支度を始めた気がしたのは早計か

▼いじめや不登校は純粋に教育問題で、法的助言がどう役立つのか分からないが、法的責任を免れるために見て見ぬ振りをすることも時には大切だなどのアドバイスを受けるというのなら分からぬでもない。助言対象が保護者や地域からの要望への対処というならいじめや不登校よりは分かりやすい。最近教員を悩ませているモンスター保護者への対応ということか

▼千葉県野田市の小学校では、父親の脅しに恐れ、秘密厳守をうたった女児のアンケートを渡し、虐待死へとつながった。最悪の事態を防ぐ転ばぬ先のつえということか。法的割り切りと教育者としての理想という相いれぬ要素の急接近が、津市が協定を導入する「時代の変化」ということかもしれない

▼ひところ警察官OBを採用する各市が県で相次いだ。津市も例外ではない。民事暴力などへの対応だったが、番犬を飼うみたいでおもしろかった。今度は弁護士かという気もする。