伊勢新聞

2019年2月6日(水)

▼12年前の前回町長選挙より12・85ポイントも投票率は下がった。低調な中での激戦。新人の大物食いの構図ということか。菰野町長選は新人の柴田孝之氏が4選を目指した現職の石原正敬氏を破り、初当選を果たした

▼前回選より2千票余少ない投票総数の中で、石原氏は4千票余、得票数を減らした。柴田氏との票差は250票ほど。「不徳の致すところ」という敗戦の弁はその通りだろうし、言ってみれば常住選挙運動をしているようなものとも言われる現職として、一概に僅差とも言えまい

▼柴田氏は身近な問題に絞って具体的に石原町政を批判した。対する石原氏は、4選出馬表明した時、論語を引用している。遠慮なければ近憂あり。遠き将来を思わずして目先のことばかり考えていると困ったことが起こる、の意

▼柴田氏が強調したのが7年前議決した中学校給食の未実現や値上げした水道料金の適正化など。石原氏は超高齢化社会や社会インフラ老朽化の対応。新名神開通に伴う基盤整備などを重要課題とした。「遠慮」と「近憂」の戦いだったようにも見える

▼中学校給食の後回しがどれほど票に影響したかは分からぬが、石原町政の一断面には違いない。議会に一定の批判勢力が存在し続けたであろうことは想像に難くない。鈴木英敬知事が進退を先送りしたことについて、一つに石原氏の進退をあげる説もあった

▼知事選への対応を見極めようとしているというのである。知事あるいは国会へのうわさは絶えなかったが、仕切り直しを迫られよう。県政界にとっても少なからず、波紋の広がる結果となった。