<まる見えリポート>使われないパソコン 本紙も県庁で〝外部監査〟

【多くの職員が詰めかける「ぶら下がり会見」=三重県庁で】

弁護士を初めて起用し、県との事前調整を取りやめるなど、例年よりも目立った三重県の包括外部監査。触発された本紙記者も庁内を〝外部監査〟すると、誰も使わない来庁者用パソコンや首をかしげたくなる業務改善案などの「指摘事項」が相次いで浮上した。いずれも「よかれと思って」という〝善意〟が背景にあるようだが、経費削減や働き方改革の方向性に逆行していると言わざるを得ない。

記者の〝外部監査〟は、県の包括外部監査が発表された先月28日から5日間にわたって実施。職員への聞き取りや、日ごろの取材を通じ、記者の直感で疑問を感じたことを取り上げることにした。

まず指摘したいのが、県議会議事堂の「展示ホール」に置かれた1台のパソコン。来庁者が県議会のホームページを閲覧すると想定して15年ほど前に設置したというが、存在していることすら知らなかった。

記者が知ったのは、県議会が1日、このパソコンを撤去すると決めたため。議会事務局によると、少なくとも一昨年の10月から利用者はいないという。プロバイダー契約料に毎年5万円を支出している。

使われていない備品に目を付けたことは評価に値するが、なぜ今まで気付かなかったのかという疑問も抱いた。「当時のことはよく知らない」と議会事務局の担当者。そもそも当初から必要だったのだろうか。

知事の「ぶら下がり会見」にも指摘したいことがある。会見に詰めかける職員の多さだ。ほぼ毎回10人以上、報道関係者より多いときもある。会見が終了するまで、記者の後方で聞き耳を立てているのだ。

当局からの発表事項や懸案問題の説明で訪れるならともかく、立っているだけの職員も多い。顔見知りの職員に尋ねてみると、理由は「うちの案件が上がるかも知れないので、念のため」とのことだった。

会見の時間は30分ほどだが、詰めかけた職員の人件費を計算すれば決して安くはないだろう。開始も午後3時半という忙しい時間帯。働き方改革が求められる中で、改善の余地がありそうだ。

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さらに、職員からもたらされたのは、庁内の業務改善案を表彰する「MIE職員力アワード」に寄せられた1件の応募。「改善案と呼べる内容ではない。さすがに納得できない」(職員)とのことだった。

この業務改善案は、県土整備部営繕課が応募した「公用車を確実に取得する方法」。管財課が一元的に管理するはずの公用車を、営繕課では職員らが2台ずつ予約し、課内で融通しているという内容だった。

この応募、実は庁内で物議を醸した。職員用の意見箱には「組織ぐるみで公用車利用の留意点をすり抜けている」「これから公用車は営繕課に頼んだ方が良い」などと、指摘や嫌みが寄せられているという。

アワードの狙いは各部署の改善案を各部署が共有して全庁的に改善を進めることにある。しかし、慢性的な公用車不足の県庁で営繕課の改善案を他部署が採用すれば「公用車争奪戦」は激しさを増すばかりだ。

アワードを担当する行財政改革推進課は、営繕課の改善案について「今後の審査があるので現段階ではコメントできない」と説明。公用車を管理する管財課も「良しあしの判断は避けたい」としている。

営繕課の担当者は応募の内容について「公用車を使う機会が特に多く、有効活用できる方法を考えてきた」と説明。応募を決めた理由は「積極的に応募するよう求められているので」と語った。