伊勢新聞

2019年1月30日(水)

▼イラク戦争に向かう米国戦車隊員の胸ポケットに旧約聖書の一節が入っていたというのは宗教学者の山折哲雄さん。「毒蛇とまむしを踏みにじり、神と共に進軍しよう」

▼米国は戦いに向かう時、怒りと罰する神の旧約を、平和、秩序の回復には許しと愛の新約聖書を使い分けてきたと共同通信加盟社論説委員会の講演で。日本はどうか。当時の小泉純一郎首相に聞いたら「うーん、ないなあ」と答えたという。県教委の廣田恵子教育長なら何と言うか

▼教職員5人を処分した会見で、不祥事根絶について「原因の分析や対応策の検討を校長が教職員と一緒に取り組むことが必要」。越境入学問題で、保護者に就職を紹介した教職員を処分しない理由について「教職員もだが、規則違反を知り得る状況にあったにも関わらず確認していなかった県教委に重い責任がある」

▼処分しない時は許しと愛の県教委、処分の時は怒りと処罰の校長か。不祥事のたびに校長会と市町等教委に綱紀粛正を通知し、わいせつについて「断じて許されないことを改めて教職員1人ひとりに周知する」。舌の根も乾かぬうちに繰り返される

▼昨年の免職処分はサッカー部顧問の対外試合後の飲酒運転。今回は女子駅伝チーム監督のわいせつ行為。ともに運動部なのは越境入学問題の許しと愛に絡むのかは知らぬが、部活動ガイドラインの1年目の検証で、守っていたのは高校が4割、中学校7割だった

▼「子どもたちの健全な成長のため、そこは絶対に守っていかなければならない」とは、スタート時の廣田教育長の決意。むなしい気がしてくる。